【ポスト前チェックリスト】企業SNS 企業文化・社風と乖離した投稿の炎上リスクと対策
企業SNSアカウントの運用を担当されている皆様にとって、日々の投稿が炎上リスクと隣り合わせであることは、常に意識されていることでしょう。多くのリスク要因が指摘される中で、意外に見落とされがちなのが、企業内部の「当たり前」が外部の常識や感覚と乖離していることによって発生する炎上リスクです。
社内で共有されている文化や価値観、あるいは特定の業界内でのみ通用する常識やユーモアが、そのままSNSの投稿に反映されてしまうと、意図せず外部からの強い批判を招くことがあります。この記事では、企業文化や社風がSNS炎上につながるメカニズムを解説し、このリスクを回避するための具体的なチェック項目と対策についてご紹介します。
企業文化・社風がSNS炎上につながるメカニズム
企業には、長年の歴史や事業特性によって培われた独自の文化や社風が存在します。従業員にとってはごく自然なこと、あるいは励みになることでも、社外の多くの人々にとっては理解しがたい、あるいは不快に感じられることがあります。
この「社内の当たり前」と「外部の常識」の間にギャップが生じる要因は多岐にわたります。
- 内輪ノリや業界特有の隠語・表現: 社内や業界内でしか通じないジョークや略語、専門用語などが、外部からは排他的、あるいは不親切に映ることがあります。
- 特定の価値観や労働観の前提: 長時間労働を美化するような表現、特定の属性に対する無意識の偏見、旧態依然としたジェンダー観などが、現代の社会規範や多様性の尊重という観点から批判されることがあります。
- 組織構造や意思決定プロセスの表出: 硬直した組織体制や非効率な業務プロセスを示唆するような投稿が、外部からは企業の活力や従業員満足度の低さを連想させ、ネガティブなイメージにつながることがあります。
- 過去の成功体験に基づく過信: かつての成功体験に固執するあまり、時代にそぐわない価値観や顧客理解の欠如を示す投稿になってしまうことがあります。
これらの内部視点に基づいた投稿は、外部の幅広いフォロワーの視点を欠いているため、共感を得られず、むしろ反感を買ってしまうリスクを孕んでいます。特にSNSは多様なバックグラウンドを持つ人々が利用するプラットフォームであり、企業の発信するメッセージは瞬時に拡散され、様々な解釈がなされます。意図しないメッセージとして受け取られた結果、ブランドイメージの毀損や顧客離れにつながる可能性があるのです。
企業文化・社風起因の炎上リスクを特定するチェック項目
投稿を作成する際、以下のチェック項目を意識することで、社内の「当たり前」がリスクにならないかを確認することができます。
- 表現の普遍性: 投稿に使用されている言葉遣いや表現は、社内や特定の業界に閉じられたものではなく、一般的に広く理解されるものですか。特定の隠語やスラング、略語は含まれていませんか。
- 価値観の押し付け: 投稿は特定の価値観や労働観(例: 頑張る姿勢、休日返上など)を暗黙のうちに推奨したり、美化したりしていませんか。それは多様な働き方や価値観を否定するメッセージとして受け取られる可能性はありませんか。
- 外部からの視点: この投稿を、自社のことを全く知らない人が読んだらどのように感じるでしょうか。ポジティブな印象を与えるでしょうか、それとも排他的、古臭い、共感できないといったネガティブな印象を与えるでしょうか。
- 特定の属性への配慮: 性別、年齢、地域、職業、ライフスタイルなど、様々な属性を持つ人々が読んで不快になる表現はありませんか。過去の事例や社会的な議論を参考に、特に注意が必要な表現がないか確認してください。
- 自社のパーパス・理念との整合性: 投稿内容は、企業のパーパスや理念、行動指針と照らし合わせて整合性が取れていますか。表向きのメッセージと、投稿から感じられる「本音」にギャップはありませんか。
- 投稿者の「中の人」感の度合い: 親しみやすさを出す意図で「中の人」のキャラクターを出す場合、それが過度に個人的な価値観や社内のローカルな雰囲気を出しすぎていませんか。企業アカウントとして適切なトーンが保たれていますか。
これらのチェック項目について、複数の担当者や、できれば多様なバックグラウンドを持つ社内のメンバーでクロスチェックを行うことが有効です。
炎上リスクを低減するための対策
企業文化や社風に起因する炎上リスクを根本から低減するためには、日々の運用における意識改革と体制構築が重要です。
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「外部目線」の醸成:
- 定期的に社会情勢や流行、SNS上での炎上事例などを共有し、外部の感覚や価値観についての理解を深める社内研修や勉強会を実施します。
- 自社のフォロワーや顧客層の声を収集・分析し、彼らの関心や価値観を理解する努力を行います。
- 可能であれば、SNS運用チームに多様なバックグラウンドを持つメンバーを含めるか、多様な視点からのレビューを取り入れる体制を構築します。
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明確な投稿基準の策定:
- 単なる「誹謗中傷しない」といった基本的なルールだけでなく、企業のパーパス、大切にしている価値観、外部にどう見られたいかといった視点を踏まえた、より具体的な投稿基準を策定します。
- 特に、自社独自の文化や慣習が、外部からはどのように見える可能性があるかといった、リスクとなりうる要素について明記します。
- この基準は従業員向けSNSガイドラインにも反映させ、全従業員に周知徹底を図ります。
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多角的レビュー・承認プロセスの強化:
- 投稿内容をSNS運用担当者だけでなく、広報、法務、あるいは他部署のメンバーなど、複数の視点を持つ関係者がレビューする体制を構築します。
- 特に、社風や業界特有の表現が含まれる可能性のある投稿については、外部の感覚に近い第三者によるチェックを必須とします。
- 機械的な承認フローだけでなく、懸念点があれば対話を通じて認識をすり合わせるプロセスを重視します。
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日頃からの社内外コミュニケーション:
- 社内に対し、企業のパーパスや外部からの見え方に関するメッセージを継続的に発信し、全従業員の意識向上を図ります。
- 社外に対しては、一方的な情報発信だけでなく、コメントやエンゲージメントを通じて対話を図り、顧客や社会の感覚とのズレがないかを常に確認する姿勢を持ちます。
企業文化や社風は企業の個性であり、適切に伝えればブランド力を高める源泉となります。しかし、外部との認識のギャップを認識せずに発信してしまうと、炎上リスクにつながります。自社の「当たり前」を客観視し、外部の多様な視点を常に意識することが、安全なSNS運用には不可欠です。
まとめ
企業SNSにおける炎上リスクは、不適切な発言や情報漏洩といった直接的な原因だけでなく、企業文化や社風といった内部の要因が外部の感覚と乖離することによっても発生します。
このリスクを回避するためには、自社の「当たり前」を客観的に見つめ直し、外部からの視点を常に意識した投稿チェックを行うことが重要です。本記事でご紹介したチェック項目や対策を参考に、多角的なレビュー体制を構築し、社内外のコミュニケーションを通じて認識のアップデートを継続してください。
企業SNSは、企業文化をポジティブに伝え、共感を呼ぶ強力なツールとなり得ます。リスクを正しく理解し、適切な対策を講じることで、ブランドイメージを守り、信頼関係を構築していきましょう。