【ポスト前チェックリスト】企業SNS 「社内の常識」が外部で通用しないリスクとチェック項目
企業SNSの運用に携わる広報・PR担当者の皆様にとって、日々の投稿における炎上リスク回避は重要な課題です。社内で十分に確認し、問題ないと思われた投稿が、外部の視点では全く異なる捉え方をされ、思わぬ炎上を招くことがあります。その原因の一つとして、「社内の常識」が外部では通用しないというギャップが挙げられます。
企業には独自の文化、業界特有の慣習、社内でのみ通用する用語や略語、そして暗黙の了解が存在します。これらの「社内の常識」に深く馴染んでいる担当者は、意図せず外部の感覚から乖離した表現を用いてしまう可能性があります。本記事では、この「社内の常識」が引き起こす炎上リスクに焦点を当て、その背景と具体的なリスク事例、そしてリスクを回避するためのチェック項目について解説します。
「社内の常識」が外部リスクとなる背景
企業内部でのコミュニケーションや意思決定は、往々にしてその企業独自の文化や歴史、特定の状況に依存します。担当者は日々の業務を通じて、こうした内部の論理や価値観を自然と内面化していきます。しかし、SNSで情報を発信する際は、これらの内部情報を共有していない不特定多数の外部の人々が対象となります。
社内では当たり前のことでも、外部から見れば専門的すぎたり、傲慢に聞こえたり、あるいは全く意図しない形で解釈されたりする可能性があります。特に、担当者が長く同一の環境にいるほど、外部の視点を持つことが難しくなる傾向にあります。また、社内での承認プロセスを経たとしても、承認担当者もまた「社内の常識」の中にいるため、外部リスクを見落としやすいという構造的な問題も存在します。
具体的な「社内の常識」リスク事例
過去の炎上事例の中には、この「社内の常識」と外部感覚のずれが原因となったものが多く見られます。
- 事例1:業界用語や社内用語の多用 特定の業界や社内で日常的に使われている略語や専門用語を、説明なく使用した結果、フォロワーに内容が理解されず混乱を招いたり、「内輪感が強い」「排他的だ」といった批判につながったりしました。
- 事例2:社内イベントや日常風景の不適切な紹介 社内のお祝い事や普段の業務風景を「当たり前の日常」としてポジティブに発信したところ、外部からは「大変な状況なのに能天気だ」「自慢話に聞こえる」「働きがいを押し付けている」といったネガティブな反応を引き起こしました。特に社会的な困難や不況下においては、こうした投稿が不謹慎と捉えられやすい傾向があります。
- 事例3:特定の部署や役職に関する表現 社内での役割や階層を示す表現、あるいは特定の部署の業務内容について言及した際、外部から見て権威的に聞こえたり、他の部署や職種を見下しているかのように捉えられたりするケースがありました。
これらの事例は、発信者が「これは当たり前の情報共有だ」「ポジティブな様子を伝えたい」という意図を持っていても、受け手である外部の人々が、その背景にある「社内の常識」を共有していないために誤解や反発が生じた典型的な例と言えます。
「社内の常識」リスク回避のためのチェック項目
「社内の常識」によるリスクを最小限に抑えるためには、意識的な「外部視点」の導入が不可欠です。投稿前に以下の項目を確認することで、このギャップに起因する炎上リスクを軽減することができます。
- 投稿内容を「全く背景を知らない外部の第三者」になったつもりで読む
- この投稿の言葉遣いは、誰にでも理解できるものか?
- 専門用語や社内用語に、補足説明やより平易な言い換えは必要か?
- 業界知識がない人が読んだら、どのように受け止める可能性があるか?
- 投稿の背景にある「社内の論理」を客観視する
- なぜこの情報をSNSで発信するのか? その背景にある社内の事情は、外部の人にとって意味があるか?
- 社内では当たり前の成功体験や苦労話が、外部から見てどのように映るか(自慢、過剰な演出などと捉えられないか)?
- 特定の部署や個人の話をする際に、不必要に内部事情を露呈したり、外部に不快感を与えたりする要素はないか?
- 「当たり前」に疑問符をつける訓練をする
- この表現は、本当に普遍的な「良いこと」「正しいこと」として受け入れられるか?
- 過去の成功事例や社内の慣習に囚われ、現在の外部環境や社会情勢との間にずれが生じていないか?
- 多様な視点での複数人チェックを実施する
- SNS担当チーム内だけでなく、SNSにあまり詳しくない従業員や、外部の友人・知人に投稿案を見てもらう機会を設ける(個人情報や機密情報に配慮しつつ)。
- 外部のSNS運用コンサルタントや専門家によるチェックを取り入れる。
- 異なる世代、性別、立場の人など、多様なバックグラウンドを持つメンバーで構成される承認体制を構築する。
- 投稿目的と期待反応を明確にする
- この投稿を通じて、外部のフォロワーに最終的に何を伝えたいのか? どのような行動や感情を促したいのか?
- その目的達成のために、社内の「当たり前」を前面に出す必要は本当にあるか? もっと外部に寄り添った伝え方はないか?
実践へのアドバイス
これらのチェック項目を単なるリストに留めず、日々の運用に組み込むことが重要です。
- チェックリストの定期的な見直し: 社会の変化や自社の状況に応じて、チェック項目を更新しましょう。
- チーム内での共通認識の醸成: 「社内の常識」リスクについてチーム全体で理解を深め、外部視点を持つことの重要性を共有しましょう。
- 過去事例からの学習: 自社や他社の炎上事例を分析する際に、「社内の常識」と外部感覚のずれがどのように影響したか、という視点を取り入れましょう。
結論
企業SNSの運用において、「社内の常識」は、しばしば外部でのリスク要因となります。発信する側が「当たり前」と思っている情報や表現が、受け手にとっては全く理解できなかったり、ネガティブに捉えられたりする可能性があります。
このリスクを回避するためには、常に外部の視点を意識し、多様なバックグラウンドを持つ人々からのフィードバックを取り入れる体系的なチェック体制を構築することが不可欠です。本記事でご紹介したチェック項目を活用し、チーム全体で外部感覚を磨き続けることが、安全で信頼される企業SNS運用への第一歩となります。