【ポスト前チェックリスト】企業SNS いいね・リポスト・フォローなど、投稿以外の反応が招く炎上リスク
企業SNSアカウントの運用において、炎上リスクは投稿内容そのものに起因するものだけではありません。意図せず行ってしまった「いいね」や「リポスト(リツイート)」、あるいは「フォロー」といった投稿以外の様々な反応が、企業の信頼性を損ない、予期せぬ炎上につながるケースが見受けられます。
SNSのプラットフォーム上では、これらのリアクションもアカウントのアクティビティとして公開され、多くのユーザーが確認できます。公式アカウントからのリアクションは、企業としての「共感」「賛同」「推奨」あるいは「関心」といった意思表明として受け取られやすいため、意図しない反応は大きな誤解を生む可能性があります。
この記事では、企業SNSアカウントが投稿以外の反応によってどのような炎上リスクを抱えるのか、その原因と具体的な防止策、そして運用担当者が確認すべきチェックポイントについて解説します。
企業SNSアカウントの反応が招く具体的な炎上リスク
企業アカウントからの投稿以外の反応は、以下のような形でリスクとして顕在化することがあります。
1. いいねによるリスク
特定の投稿への「いいね」は、その内容への「共感」や「賛同」と見なされることが一般的です。
- 不適切・センシティブな内容への「いいね」: 差別的な発言、政治的に偏った意見、倫理的に問題のあるコンテンツなど、企業の姿勢として認められない内容にうっかり「いいね」をしてしまうと、企業がその意見に賛同しているかのような誤解を生み、激しい批判につながります。
- 競合他社や特定の個人アカウントへの「いいね」: 意図せず競合の投稿に「いいね」をしたり、企業と関係性の不明確な個人の投稿に「いいね」をすることで、不要な憶測を呼んだり、プロモーション目的と疑われたりするリスクがあります。
- 炎上中の投稿への「いいね」: 既に炎上している個人の投稿や批判的な意見に「いいね」をすることで、火に油を注ぐ結果となる可能性があります。
2. リポスト(リツイート)によるリスク
リポストは、元の投稿を自社アカウントのフォロワーに拡散する行為です。これは強い「推奨」や「情報共有」の意思表示と捉えられます。
- 誤情報・フェイクニュースの拡散: 不確かな情報や事実誤認を含む内容をリポストしてしまうと、企業が誤情報を拡散したとして信頼性が失墜します。
- ヘイトスピーチや個人攻撃の拡散: 攻撃的、誹謗中傷的な投稿をリポストすることは、企業がそのような言動を許容しているかのような印象を与え、深刻な炎上を招きます。
- 著作権・肖像権侵害コンテンツの拡散: 権利処理が不明確な画像や動画を含む投稿をリポストすることで、企業自身も権利侵害に加担したと見なされるリスクがあります。
- ブランドイメージと乖離した内容の拡散: 企業のブランドイメージや発信する情報トーンとは全く異なる、あるいは相容れない内容をリポストすることで、ユーザーに混乱を与え、不信感につながります。
3. フォローによるリスク
企業アカウントが特定のアカウントをフォローする行為は、「関心がある」「関係性がある」「情報を収集している」といった意思表示と見なされます。
- 不適切・怪しいアカウントのフォロー: 倫理的に問題のあるアカウント、スパムアカウント、信頼性に欠ける情報源などをフォローしていることが発覚すると、企業の信頼性そのものが問われます。
- 特定の政治・宗教・思想関連アカウントのフォロー: 企業として中立的な立場を保つべきであるにも関わらず、特定の政治家や政党、宗教団体、思想団体などのアカウントをフォローすることは、企業が特定の立場を支持しているとの誤解を生み、分断や批判を招く可能性があります。
- 従業員のプライベートアカウントのフォロー: 運用担当者や関係者個人のプライベートアカウントを企業アカウントがフォローしていると、公私混同と見なされたり、その個人の投稿内容に企業が責任を持つべきではないかという議論を招いたりするリスクがあります。
なぜ意図しないリアクションが起こってしまうのか
これらの意図しないリアクションは、多くの場合、悪意ではなく不注意や体制の不備によって発生します。主な原因としては以下が考えられます。
- 中の人のプライベートアカウントとの混同: 運用担当者が複数のアカウントを切り替えて利用している際に、誤って企業アカウントでプライベートな行動を行ってしまう。
- 操作ミス・確認不足: スマートフォンでの指先の誤りや、急いで操作を行った際の確認漏れ。
- チーム内のルール・教育不足: 企業アカウントでのリアクションに関する明確なガイドラインが存在しない、あるいは担当者への周知・教育が不十分である。
- 自動ツール・連携サービスの設定ミス: 意図しない自動いいね・フォロー機能が有効になっていたり、外部連携サービスが予期せぬ挙動をしたりする。
- モラルハザード・当事者意識の欠如: 運用担当者が公式アカウントであることを十分に意識せず、個人のアカウントと同じような感覚で操作してしまう。
意図しないリアクションを防ぐためのチェックポイントと対策
意図しないリアクションによる炎上リスクを最小限に抑えるためには、事前のルール整備と運用上の注意、そして確認体制の構築が不可欠です。
1. 社内体制・ルールの整備
- リアクションに関する明確なガイドラインの策定:
- 企業アカウントとして「いいね」「リポスト」「フォロー」を行う際の基準を明確に定めます。原則として、これらのリアクションは行わない、あるいは特定の承認プロセスを経る必要がある、といったルールを設けることが有効です。
- 特にリポストは内容を十分に吟味し、出典の信頼性や内容の適切性を複数人で確認する体制を推奨します。
- フォローについても、企業活動に関連する公式アカウントや信頼できる情報源に限定するなどの基準を設けます。
- 運用担当者への徹底した教育:
- 公式アカウントであることの重み、リアクション一つが企業イメージに与える影響について繰り返し教育します。
- プライベートアカウントとの明確な区別を徹底させ、物理的にデバイスを分ける、ブラウザのプロファイルを分けるなどの対策を推奨します。
- 複数人での承認・チェック体制:
- 特にリポストなど、影響力の大きいリアクションについては、担当者一人の判断ではなく、複数の担当者や責任者が確認・承認するフローを導入します。
- 日々の運用においても、相互にアカウントのアクティビティをチェックする体制を構築します。
- インシデント発生時の対応フロー整備:
- 万が一、意図しないリアクションが発生してしまった場合の、速やかな検知、削除、謝罪、原因究明、再発防止策実施といった一連の対応フローを事前に定めておきます。
2. 運用上の具体的な対策
- アカウントの物理的な分離:
- 可能な場合は、企業アカウント専用のデバイスを用意します。
- 同一デバイスを使用する場合は、ブラウザのプロファイル機能を活用してセッションを分離したり、SNSアプリのアカウント切り替え時の注意喚起を徹底したりします。
- 自動化ツールの設定確認:
- 運用効率化のために使用している外部ツールや連携サービスについて、意図しない自動いいね、自動フォロー、自動リポストなどの機能が有効になっていないか、定期的に設定を確認します。
- 定期的なアカウント棚卸し:
- フォローしているアカウントリストを定期的に見直し、不適切またはもはやフォローする必要のないアカウントがないか確認します。
- 「いいね」やリポストの履歴も確認できるプラットフォームでは、運用担当者間で相互に履歴を確認する習慣をつけます。
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操作時のチェックリスト活用:
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何らかのリアクションを行う際には、以下のような簡潔なチェックリストで再確認を行います。
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公式アカウントで操作しているか確認しましたか?
- このリアクション(いいね/リポスト/フォロー)は、企業の定めたガイドラインに沿っていますか?
- リポストしようとしている投稿内容は、信頼でき、不適切または炎上リスクを含む内容ではありませんか?
- フォローしようとしているアカウントは、企業として適切ですか?
- このリアクションが、ユーザーにどのようなメッセージとして伝わるか想像できましたか?
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結論
企業SNSアカウントの運用において、投稿内容に細心の注意を払うことはもちろん重要ですが、「いいね」「リポスト」「フォロー」といった投稿以外の何気ないリアクションにも、ブランドイメージを損ない、炎上につながる潜在的なリスクが潜んでいます。
これらのリスクは、多くの場合、ヒューマンエラーや体制の不備によって引き起こされます。リスクを回避するためには、企業としてリアクションに関する明確なルールを定め、運用担当者への徹底した教育を行い、複数人での確認体制を構築することが不可欠です。
ご紹介したチェックポイントや対策を参考に、投稿前のチェックだけでなく、日々の運用におけるリアクション一つひとつに対する意識を高め、安全な企業SNS運用体制を構築していただければ幸いです。定期的な社内研修やガイドラインの見直しを通じて、常にリスクを念頭に置いた運用を心がけてください。