【ポスト前チェックリスト】企業SNS トンマナのブレ・不適切設定が招く炎上リスクと対策
企業公式アカウントのSNS運用において、どのような言葉遣いや表現を用いるかを示す「トンマナ(トーン&マナー)」の設定は、ブランドイメージを構築し、維持するために不可欠な要素です。しかし、このトンマナが適切に設定されていなかったり、運用中にブレが生じたりすることは、意図しない誤解や不信感を生み、炎上リスクにつながる場合があります。
企業広報・PR担当者の皆様が、安全かつ効果的なSNS運用を行うために、トンマナに関連する炎上リスクを理解し、適切な対策を講じるための情報を提供いたします。
企業SNS運用におけるトンマナの重要性
トンマナとは、企業がSNS上で発信する情報において一貫性を保つための「言葉遣い」「表現スタイル」「ビジュアルイメージ」などのルールや指針を指します。具体的には、以下のような要素が含まれます。
- 言葉遣い: 丁寧語、親しみやすい口調、専門用語の使用レベルなど
- 絵文字・記号: 使用の可否、頻度、種類など
- ビジュアル: 画像、動画、デザインの色調、スタイルなど
- コンテンツの方向性: 硬派、ユーモラス、情報提供型など
- ターゲット層への寄り添い方: どのような距離感でコミュニケーションを取るか
明確なトンマナを設定し、運用チーム全体で共有することで、以下のようなメリットがあります。
- ブランドイメージの一貫性維持
- ターゲット層との適切な関係性構築
- 運用効率の向上
一方で、トンマナのブレや不適切な設定は、ユーザーの混乱や不信感を招き、炎上リスクを増大させる要因となります。
トンマナのブレ・不適切設定が招く炎上リスク
トンマナに関連して発生しうる炎上リスクには、いくつかのパターンがあります。
1. ブランドイメージとの乖離
企業が持つ本来のブランドイメージや、ユーザーが抱く企業への印象と、SNS上での表現が大きく乖離している場合、ユーザーは違和感を覚え、不信感を抱く可能性があります。例えば、伝統を重んじる老舗企業が過度にフランクな言葉遣いを用いたり、真面目な製品を扱う企業が軽薄なユーモアを多用したりするケースなどが該当します。これにより、「期待していたイメージと違う」「企業のメッセージが信用できない」といった批判につながることが考えられます。
2. ターゲット層とのミスマッチ
設定したトンマナが、本来コミュニケーションを取りたいターゲット層に適していない場合、発信するメッセージが響かなかったり、逆に不快感を与えたりする可能性があります。例えば、年配の層に向けた情報発信なのに若者言葉を多用したり、専門知識を求める層に当たり障りのない表現しか用いなかったりする場合などが考えられます。
3. 過去投稿や企業活動との一貫性の欠如
SNSの過去の投稿、企業のプレスリリース、ウェブサイトの情報、あるいは実際の企業活動や理念と、現在のSNS投稿のトンマナが矛盾している場合、ユーザーは企業の姿勢やメッセージに疑問を抱きます。これは、特に企業の不祥事や炎上後の対応において、以前と同じようなトンマナで投稿を再開した場合などに顕著に表れ、「反省が見られない」「誠実さがない」といった批判を招くことがあります。
4. 特定の文脈や社会情勢との衝突
日常的に使用しているトンマナが、特定の社会情勢やニュース、イベントなどの文脈に照らして不適切になる場合があります。例えば、災害発生時や社会的な悲劇が起きた際に、普段通りの軽妙なトンマナで投稿してしまうと、「不謹慎だ」といった強い批判を招く可能性があります。
5. 運用担当者による表現のばらつき
複数の担当者が運用している場合、明確なトンマナガイドラインがないと、担当者ごとに言葉遣いや表現スタイルにばらつきが生じます。これにより、ユーザーはアカウントに対して一貫したイメージを持てず、混乱したり、特定の担当者のスタイルに不満を感じたりする可能性があります。
トンマナ関連の炎上リスクを回避するための対策
これらのリスクを未然に防ぐためには、以下の対策が有効です。
1. 明確なトンマナ定義の策定
SNS運用の目的、ターゲット層、伝えたいメッセージなどを明確にした上で、具体的にどのような言葉遣い、表現、ビジュアルを用いるのかを定義します。ターゲット層が普段どのような言葉を使っているのか、どのような表現を好むのかを分析することも重要です。
2. トンマナガイドラインの作成と共有
策定したトンマナを文書化した「トンマナガイドライン」を作成します。このガイドラインには、使用して良い言葉・避けるべき言葉、絵文字の使用ルール、ビジュアルのトーン&マナー、投稿の頻度や時間帯の目安などを具体的に盛り込みます。作成したガイドラインは、SNS運用に携わる全ての担当者、関連部署、外部委託先などと共有し、内容について周知徹底を図ります。
3. 投稿承認プロセスへの組み込み
SNS投稿の承認プロセスにおいて、内容のチェックだけでなく、トンマナに沿っているかどうかの確認項目を設けます。特に、新しい担当者が投稿する場合や、普段と異なる内容を投稿する際には、複数名でトンマナをチェックする体制を整えることが望ましいでしょう。
4. 定期的な見直しと改善
トンマナは一度設定したら終わりではなく、ターゲット層の変化、社会情勢の変化、SNSプラットフォームのトレンドなどに応じて、定期的に見直しを行う必要があります。ユーザーからの反応(コメント、エンゲージメント率など)を分析し、必要に応じてトンマナを調整することも重要です。
5. 運用担当者の研修・教育
SNS運用担当者に対して、策定したトンマナガイドラインに基づいた研修を実施します。トンマナの意図や重要性を理解してもらうことで、個々の投稿における判断精度を高めることができます。また、担当者間で定期的に投稿内容やトンマナについて議論する場を設けることも有効です。
6. 過去投稿との一貫性チェック
新しい投稿を行う際には、過去の重要な投稿や企業の声明などと矛盾する表現がないかを確認します。特に、炎上経験がある場合は、その原因となった表現やトンマナを繰り返さないよう注意が必要です。
トンマナ関連炎上リスク対策チェックリスト
投稿前に以下の項目を確認することで、トンマナに関連するリスクを低減できます。
- 投稿内容が、策定されたトンマナ定義(言葉遣い、表現スタイル、ビジュアル等)に沿っているか
- 使用している言葉遣いや絵文字は、ターゲット層に対して適切か、不快感を与える可能性はないか
- 投稿のトーンは、ブランドイメージや企業文化と乖離していないか
- 過去の重要な投稿や企業活動と矛盾する表現が含まれていないか
- 現在の社会情勢や特定の文脈に照らして、不謹慎、あるいは配慮を欠く表現となっていないか
- 複数の担当者が運用している場合、担当者間の表現に大きなばらつきはないか
- トンマナガイドラインに明記された禁止事項に抵触していないか
- 投稿のビジュアル(画像、動画)は、定められたトンマナやブランドガイドラインに沿っているか
まとめ
企業SNS運用におけるトンマナは、単なる表現スタイルの問題ではなく、企業の信頼性やブランドイメージに直結する重要な要素です。トンマナのブレや不適切な設定は、ユーザーからの不信感や批判を招き、炎上リスクを高める可能性があります。
明確なトンマナ定義の策定、ガイドラインの共有、承認プロセスへの組み込み、そして運用担当者への教育と継続的な見直しを行うことで、これらのリスクを回避し、一貫性のある信頼できる情報発信が可能となります。日々の投稿前チェックリストにトンマナに関する項目を加え、チーム全体で意識を高めることが、安全なSNS運用体制を構築する上で不可欠です。