【ポスト前チェックリスト】企業SNS 緊急時(災害・事故)の情報発信リスクとチェック項目
はじめに
災害や事故などの緊急時において、企業SNSは重要な情報伝達手段となり得ます。被災された方々やその関係者への配慮、正確な情報提供、事業継続に関する情報発信など、企業として果たすべき社会的責任を示す機会でもあります。しかし、このような状況下での情報発信は、平時とは異なる特有の炎上リスクを伴います。配慮不足、不正確な情報、プロモーションと受け取られかねない表現などは、企業の信頼性を大きく損なう可能性があります。
本稿では、企業SNS運用を担当される皆様が、緊急時においても適切な情報発信を行い、炎上リスクを最小限に抑えるために確認すべきチェック項目と対策について解説します。
緊急時に企業SNSが担う役割と特有のリスク
緊急時における企業SNSの役割は多岐にわたります。
- 情報提供: 事業拠点や店舗の状況、サービス提供の可否、問い合わせ窓口など、自社の事業に関連する正確な情報を迅速に提供する。
- 安否確認・支援表明: 従業員や関係者の安否確認、被災された方々へのメッセージ発信、企業としての支援活動の告知。
- 社会への協力: 公的機関からの情報や注意喚起の共有、デマ拡散防止への協力。
これらの重要な役割を果たす一方で、緊急時特有のリスクが存在します。
- 情報の不正確さ: 混乱した状況下で未確認情報や誤った情報を発信するリスク。
- 不謹慎な表現: 被災者や関係者の心情を傷つける、あるいは状況の深刻さを軽視するような表現を使用するリスク。
- プロモーションとの混同: 緊急時の状況を利用して自社サービスや製品を露骨にアピールしていると受け取られるリスク。
- 過去投稿とのギャップ: 平時のトーンとの乖離が大きすぎたり、過去の不適切な投稿が掘り起こされたりするリスク。
- 社内連携の遅れ: 関係部署や経営層との情報共有・承認プロセスが機能せず、誤った判断や発信遅延が生じるリスク。
- プライバシー問題: 安否情報や被災状況に関する写真・動画などが、個人のプライバシーを侵害するリスク。
緊急時における情報発信のためのチェック項目
緊急時にSNSで情報発信する際は、以下の項目を慎重に確認することが求められます。
1. 発信の必要性と判断
- 発信の目的は明確か? (例: 安全確保、情報提供、支援表明など)
- 自社の事業や関係者に直接関連する情報か? (無関係な時事問題への過度な言及は避ける)
- 社会的な要請や期待に応えるものか?
- 発信しないという選択肢も含め、総合的に判断しているか?
2. 情報の正確性と信頼性
- 発信する情報は公式発表や信頼できる情報源に基づいているか? (公的機関、報道機関、自社の公式情報など)
- 未確認の情報や憶測を含んでいないか?
- 情報の更新が必要な場合、その体制は整備されているか? (訂正・追記の方法、頻度など)
3. 表現・内容の適切性
- 被災された方々や関係者の心情に最大限配慮した言葉選びか? (絵文字や過度に明るいトーン、軽い表現は避ける)
- 状況の深刻さを踏まえた、落ち着いた謙虚なトーンか?
- 自社サービスや製品のプロモーションと受け取られる表現はないか? (原則として緊急時はサービス紹介やキャンペーン告知は停止する)
- 特定の個人や団体を攻撃・批判する内容を含んでいないか?
- 不謹慎、あるいは状況便乗と解釈される余地はないか?
4. 画像・動画のチェック
- 被災状況や被害の様子など、センシティブな内容を安易に使用していないか? (使用する場合は、配慮を示す文言を添えるなど慎重に)
- 個人の特定につながる情報(顔、住所、ナンバープレートなど)が映り込んでいないか?
- 使用する画像・動画の著作権や肖像権はクリアになっているか? (平時以上に確認を徹底する)
5. 社内連携と承認フロー
- 経営層や危機管理部門など、関係部署と連携し、発信内容の承認を得ているか? (担当者個人の判断に委ねない)
- 社内で共有されている緊急時対応マニュアル(SNS対応含む)に沿った判断か?
- 広報部門だけでなく、事業部門や法務部門などのチェックは入っているか?
6. コメント・リプライ対応
- 緊急時における問い合わせやコメントへの対応方針は決まっているか?
- 誤情報やデマ、誹謗中傷に対してどのように対応するか?
- 安否確認など、個別の対応が難しい内容への定型的な返信文は準備されているか?
事前準備と対策
緊急時に慌てないためにも、平時からの準備が不可欠です。
- 緊急時対応マニュアル(SNS対応パート)の策定: 発信判断フロー、承認ルート、使用可能な表現・避けるべき表現、定型文などを明文化します。
- 情報収集体制の確認: 公的機関や信頼できるメディアなど、正確な情報源をリストアップしておきます。
- 社内連絡体制の構築: 緊急時の迅速な情報共有・意思決定のための連絡網や会議体を整備します。
- 定型文の準備: 被災者へのお見舞い、サービス影響、問い合わせ先など、想定される事態ごとの定型文を作成しておきます。
まとめ
災害や事故といった緊急時における企業SNSでの情報発信は、その影響力が非常に大きいからこそ、平時以上に慎重な判断と周到な準備が求められます。情報の正確性、表現の適切性、そして何よりも被災された方々への最大限の配慮を忘れてはなりません。
今回ご紹介したチェック項目と事前準備は、緊急時において企業が社会的な責任を果たしつつ、ブランドイメージを守るために不可欠なものです。ぜひ貴社のSNS運用体制に取り入れ、予期せぬ事態に備えていただければ幸いです。