【ポスト前チェックリスト】企業SNS投稿における個人情報・プライバシーリスクとチェック項目
企業公式SNSアカウントの運用において、投稿内容は企業イメージに直結する重要な要素です。一方で、意図せず個人情報やプライバシーに関わる情報が含まれてしまうことで、炎上リスクを高めてしまうケースも少なくありません。特に、個人情報保護法が改正され、企業の個人情報取り扱いに対する社会的な意識が高まっている現在、SNS担当者にはより一層の注意が求められます。
本記事では、企業SNS投稿に潜む個人情報・プライバシーに関するリスクを具体的に解説し、投稿前に確認すべきチェック項目と、リスク回避のための対策についてご説明いたします。この記事を通じて、読者の皆様が安全なSNS投稿体制を構築するための一助となれば幸いです。
企業SNS投稿に潜む個人情報・プライバシーリスクの種類
企業SNS投稿における個人情報・プライバシーリスクは多岐にわたります。主なリスクとして、以下のような点が挙げられます。
1. 投稿コンテンツへの個人情報・プライバシー情報の写り込み
画像、動画、テキストといった投稿コンテンツそのものに、特定の個人を識別できる情報やプライバシーに関わる情報が含まれてしまうリスクです。
- 視覚情報: 写真や動画に、従業員、顧客、通行人の顔、ナンバープレート、表札、PC画面、書類、個人の特定につながる背景などが意図せず写り込むケース。
- テキスト情報: 投稿文やキャプションに、個人の氏名、連絡先、所属、位置情報、または個人を特定できるような出来事や状況に関する詳細情報を含んでしまうケース。
- メタデータ: 画像や動画ファイルに含まれる位置情報、撮影日時などのメタデータから、個人情報やプライバシー情報が漏洩するリスク。
2. ユーザー投稿(UGC)やコメントの取り扱い
ユーザーが企業アカウントに寄せたコメントや、キャンペーンなどで収集したUGC(User Generated Content)を扱う際に発生するリスクです。
- ユーザーの同意なき利用: ユーザーが投稿したコンテンツ(写真、コメントなど)を、明確な同意を得ずに企業の投稿や広告に二次利用するケース。
- 個人情報を含むコメントへの対応不備: ユーザー自身が個人情報(氏名、連絡先など)をコメント欄に書き込んでしまった際に、適切な処理(非表示、削除、本人への注意喚起など)を行わないまま放置するケース。
- DMなど非公開情報の取り扱い: ユーザーからDM等で寄せられた個人情報や相談内容を、本人の同意なく公開してしまうケース。
3. 従業員に関する情報の取り扱い
従業員を被写体とした投稿や、従業員のSNS活動に関連するリスクです。
- 従業員の顔写真・動画の公開: 従業員の顔や声が写った写真・動画を、事前の同意なく投稿するケース。特に退職者の情報が残ってしまうリスク。
- 従業員の個人的な状況に関する言及: 投稿内容に従業員のプライベートな状況(体調、家族構成など)を含んでしまうケース。
- インフルエンサー社員などの情報開示: いわゆる「インフルエンサー社員」の個人アカウントや活動と企業アカウントを連携させる際に、情報管理が不十分となるケース。
これらのリスクが顕在化した場合、単なる炎上にとどまらず、個人情報漏洩として法的な問題に発展したり、企業の信頼性を著しく損なったりする可能性があります。
炎上を防ぐためのポスト前チェック項目
これらのリスクを回避するためには、投稿前に以下のチェック項目を確実に実行することが重要です。
- コンテンツ内の個人情報・プライバシー情報チェック:
- 投稿する画像・動画内に、個人を特定できる顔(従業員、顧客、通行人など)が鮮明に写り込んでいないか確認しましたか?必要な場合は、モザイク処理やトリミングを行いましたか?
- 画像・動画内に、ナンバープレート、表札、部屋の内部、PC/スマホ画面、特定の書類など、個人やその生活状況を特定できるものが写り込んでいないか確認しましたか?
- テキスト投稿に、特定の個人の氏名、連絡先、所属、住所など、個人を特定できる情報を含んでいませんか?
- 位置情報サービスをオフにする、または投稿前に画像・動画のメタデータから位置情報が削除されているか確認しましたか?
- 背景に、顧客情報や機密情報が写り込んだ掲示物や画面などがないか確認しましたか?
- ユーザー生成コンテンツ(UGC)の利用チェック:
- ユーザーの投稿を二次利用する場合、対象者から明確な同意(利用範囲、利用媒体、期間などを含む)を事前に書面またはそれに代わる方法で取得していますか?
- 同意取得のプロセスは、個人情報保護法および各SNSプラットフォームの規約に則っていますか?
- 利用するUGCに、第三者の個人情報やプライバシー情報が含まれていないか確認しましたか?
- コメント・リプライチェック:
- ユーザーがコメント欄に自身の個人情報を書き込んでいる場合、その情報を非表示または削除するなどの対応ルールが明確に定められていますか?
- 他のユーザーが第三者の個人情報をコメントした場合の対応ルールはありますか?
- DMで受け取った個人情報や相談内容を、本人の同意なく公開していませんか?
- 従業員情報チェック:
- 従業員の顔写真や動画を投稿する場合、本人から事前の同意(投稿媒体、期間、目的などを明記)を得ていますか?特に退職者の情報に注意していますか?
- 従業員の個人的な状況(健康状態、家族に関する情報など)を投稿内容に含んでいませんか?
- 撮影環境チェック:
- 撮影場所が、他者のプライバシーを侵害する可能性のある場所(例: 顧客の敷地内の無断撮影、個人の住居が特定できる場所など)ではありませんか?
- ライブ配信などを行う場合、意図せず個人情報やプライバシー情報が映り込む可能性がないか、事前に環境を確認しましたか?
これらのチェック項目を、投稿承認フローに組み込むことを推奨いたします。
リスク発生時の対応と社内体制の構築
万が一、個人情報やプライバシーに関わる情報を含む投稿を行ってしまった場合、迅速かつ適切な対応が求められます。
- 即時対応: 投稿を発見次第、速やかに該当投稿を削除または修正します。スクリーンショットなどを控えておくことも検討します。
- 状況把握と影響範囲の確認: どのような情報が、どのくらいの期間、どの範囲に露出したのかを正確に把握します。個人情報保護法の観点から、漏洩に該当する可能性も検討します。
- 関係部署との連携: 法務部門、情報セキュリティ部門、広報部門など、関係する部署と速やかに連携し、対応方針を協議します。
- 事実確認と原因究明: なぜリスクのある投稿が行われたのか、原因を詳細に調査します。
- 対外的な対応(必要に応じて): 状況に応じて、公式アカウントでの謝罪文掲載や、影響を受けた可能性のある個人への連絡などを検討します。その際は、不用意な情報開示がさらなる炎上を招かないよう、慎重な表現を心がけます。
- 再発防止策の実施: 原因に基づいて、チェック体制の見直し、担当者への再教育など、具体的な再発防止策を策定・実行します。
これらの対応を迅速に行うためには、日頃からの社内体制構築が不可欠です。
- SNS運用ガイドラインへの明記: 個人情報・プライバシー情報の取り扱いに関する規定を、企業SNS運用ガイドラインに明確に記載します。
- 担当者教育: SNS運用担当者だけでなく、コンテンツ作成に関わる全員に対し、個人情報保護とプライバシーに関する教育を定期的に実施します。
- 承認フローへの組み込み: 投稿承認フローに、個人情報・プライバシー情報のチェック項目を必須として組み込みます。複数の担当者や部署でチェックする体制を構築します。
- 緊急時対応プランの策定: 個人情報関連のリスクが発生した場合の、連絡体制や対応手順を事前に定めておきます。
まとめ
企業SNS投稿における個人情報・プライバシーリスクは、企業の信頼性を揺るがす重大な問題につながる可能性があります。投稿前に今回ご紹介したチェック項目を徹底し、社内体制を整備することで、これらのリスクを最小限に抑えることができます。
常に「この情報が公開されることで、誰かのプライバシーが侵害される可能性はないか」「この画像や動画に、意図しない個人情報が写り込んでいないか」といった視点を持つことが重要です。継続的な学習と社内での意識共有を図りながら、安全で信頼される企業SNS運用を目指してください。