【ポスト前チェックリスト】企業SNS ライブ配信・ストーリーズ投稿の炎上リスクとチェック項目
企業SNSにおけるライブ配信・ストーリーズ投稿のリスクと対策
近年、企業がSNSでユーザーとのエンゲージメントを高める手法として、ライブ配信やストーリーズ投稿の活用が進んでいます。これらの機能はリアルタイム性や臨場感があり、親近感を醸成する上で非常に有効ですが、その性質ゆえにテキストや編集された画像・動画投稿とは異なる特有の炎上リスクも存在します。
本記事では、企業SNSのライブ配信およびストーリーズ投稿に潜むリスクを整理し、これらの機能を使用する前に確認すべき具体的なチェック項目と、リスク発生時の対策について解説します。企業広報・PR担当者の皆様が、安全かつ効果的にライブ配信・ストーリーズを活用するための一助となれば幸いです。
ライブ配信・ストーリーズ投稿の特性と潜むリスク
ライブ配信やストーリーズは、その場で起きていることを即時に共有できる点が最大の魅力です。しかし、この「リアルタイム性」と「一時性」(ストーリーズの場合)こそがリスクの温床となり得ます。主なリスクは以下の通りです。
- 予期せぬ事態の発生と映り込み: 配信中に無関係な人や物、背景の様子などが映り込んでしまうリスクです。プライバシー侵害、機密情報の漏洩、不適切なものが写り込むことによるブランドイメージの低下に繋がる可能性があります。
- リアルタイムでの不適切発言・対応: ライブであるため、意図しない失言や、視聴者からの予測不能なコメントへの対応に詰まったり、感情的な反応をしてしまったりするリスクがあります。編集ができないため、一度発信された内容は取り消すことが困難です。
- コメント欄での荒らし・誹謗中傷: ライブ配信のコメント欄はリアルタイムで表示されるため、ネガティブなコメントや誹謗中傷、無関係な投稿(スパムなど)が流れやすく、適切に対応できないと炎上を加速させる可能性があります。
- 準備不足による進行の滞り・情報の誤り: 事前の準備やリハーサルが不十分な場合、進行がスムーズに進まなかったり、提供する情報に誤りがあったりするリスクがあります。視聴者の離脱を招くだけでなく、情報の信頼性を損なうことにも繋がりかねません。
- 出演者の不適切な行動・言動: 配信に出演する従業員やゲストの個人的な言動が、企業の公式な見解と誤解されたり、不適切とみなされたりするリスクです。
- 一時性ゆえの証拠隠滅疑念・アーカイブ問題: ストーリーズは短時間で非表示になる特性がありますが、スクリーンショットや画面録画で拡散される可能性があります。また、ライブ配信のアーカイブを残すかどうかの判断も重要で、トラブルがあった際にアーカイブを非公開にすると「証拠隠滅か」と批判されるリスクも存在します。
- 技術的なトラブル: 配信中の音声途切れ、映像の乱れ、接続不良、使用ツールの不具合など、技術的な問題が発生するリスクです。これにより視聴体験が損なわれ、不満や批判に繋がる可能性があります。
ライブ配信・ストーリーズ投稿前のチェック項目
これらのリスクを踏まえ、配信や投稿前に以下の項目を必ず確認することが重要です。
企画・コンテンツに関するチェック
- 目的とターゲットの明確化:
- 配信/投稿の目的(例: 新製品紹介、Q&Aセッション、舞台裏紹介など)は明確か。
- 誰に向けて発信する内容か、ターゲット層の特性(関心事、価値観など)は考慮されているか。
- コンテンツ内容の確認:
- 事前に台本や進行フローを作成しているか。
- 提供する情報に誤りはないか、事実確認は徹底されているか。
- 視聴者からの想定される質問や、センシティブになりうる話題への対応方針は検討されているか。
- 法令遵守(著作権、景表法、個人情報保護など)の観点から問題ないか。(BGMの著作権、映り込む人の肖像権など)
- 出演者の選定と準備:
- 出演者は配信内容について十分な理解があるか。
- 出演者に対して、企業としての基本姿勢、避けるべき言動、緊急時の対応などについて事前に研修やブリーフィングを行っているか。
- 出演者の個人的なSNSでの言動が、企業のイメージと著しく乖離していないか。
配信環境・技術に関するチェック
- 配信場所の確認:
- 映り込みたくないものが背景にないか、整理整頓されているか。
- 騒音が入らないか、プライバシーが保たれる環境か。
- 照明やアングルは適切か。
- 技術テストの実施:
- 使用するデバイス(スマートフォン、PCなど)は正常に動作するか。
- インターネット接続は安定しているか、十分な帯域幅があるか。
- マイクやカメラは正常に機能するか、音声レベルは適切か。
- 使用する配信ツールやプラットフォームの操作方法、設定(公開範囲、コメント許可設定など)は正しく理解されているか。
- リハーサル配信を行い、音声や映像、進行に問題がないか確認しているか。
リスク管理体制に関するチェック
- コメント監視体制:
- 配信中にコメントを監視する担当者を配置しているか。
- 不適切なコメント(誹謗中傷、スパム、プライバシー侵害など)に対して、どのように対応するかのルール(例: 非表示、ブロック、通報)を定めているか。
- 視聴者からのネガティブな意見や質問に対して、誰が、どのように返答するかの体制はできているか。
- 緊急時対応フロー:
- 配信中に技術トラブルや予期せぬ問題が発生した場合の対応フロー(例: 配信中断、別アカウントからの告知、後日の説明など)は定められているか。
- 炎上発生時、速やかに責任者や関係部署(広報、法務など)に連絡する体制はできているか。
- アーカイブの取り扱い方針:
- 配信終了後、アーカイブを公開するか、非公開にするか、編集して公開するかなどの方針は事前に検討されているか。
- ストーリーズの場合、意図せず拡散された場合の対応についても想定しているか。
配信中・配信後の対応
事前のチェックだけでなく、配信中および配信後の適切な対応もリスク最小化には不可欠です。
- 配信中の冷静な対応:
- トラブル発生時も落ち着いて対処し、視聴者へ状況説明を行います。
- コメント欄を監視し、問題のあるコメントには事前に定めたルールに基づき対応します。
- 不適切な発言や問題が起きた場合は、速やかに訂正や謝罪を行います。場合によっては、配信を中断することも重要な判断です。
- 炎上発生時の初動:
- 万が一炎上した場合、状況を正確に把握し、原因を分析します。
- 責任者や関係部署と連携し、迅速かつ誠実な対応を行います。否定や隠蔽はせず、事実に基づいた情報公開と謝罪が必要となる場合があります。
- 事後検証と改善:
- 配信後、問題なく終了した場合も、問題が発生した場合も、必ず配信内容、視聴者の反応、発生したトラブル、対応について検証を行います。
- 検証結果をもとに、次回の配信に向けた改善策を講じ、社内での情報共有を行います。
まとめ
企業SNSにおけるライブ配信やストーリーズ投稿は、ブランドの魅力をリアルに伝える powerful な手法です。しかし、その特性ゆえに潜むリスクを理解し、事前に入念なチェックと準備を行うことが、炎上を防ぎ、ブランドイメージを守る上で非常に重要となります。
本記事でご紹介したチェックリストは、安全なライブ配信・ストーリーズ運用体制を構築するための一助となるはずです。常に最悪の事態を想定しつつ、最善の準備を講じること。そして、万が一リスクが顕在化した場合でも、誠実かつ迅速に対応できる体制を整えておくことが、企業SNS担当者に求められています。このチェックリストを参考に、貴社のSNS運用におけるリスク管理体制を一層強化していただければ幸いです。