【ポスト前チェックリスト】企業SNS 誤情報・フェイクニュース対策:情報の信頼性を保つには
企業公式アカウントのSNS運用において、投稿内容の正確性とその根拠は、ブランドの信頼性を維持する上で極めて重要です。近年、インターネットやSNS上では誤情報やフェイクニュースが急速に拡散するリスクが高まっており、企業アカウントが意図せずそうした情報に関与したり、自ら誤った情報を発信したりすることで、炎上や信用失墜につながるケースが見受けられます。
本稿では、企業SNS運用担当者の皆様が、誤情報・フェイクニュースのリスクを回避し、常に信頼性の高い情報発信を行うための具体的なチェック項目と、組織として取り組むべき体制構築について解説いたします。ポスト前の確認プロセスに本稿の内容を加えていただくことで、リスクを最小限に抑え、安全な情報伝達を実現するための一助となれば幸いです。
企業SNSにおける誤情報・フェイクニュースのリスク
誤情報やフェイクニュースは、情報の受け手に間違った認識を与え、不信感や混乱を招きます。企業アカウントがこれに関与した場合、以下のような深刻なリスクが発生する可能性があります。
- ブランドイメージの毀損: 不正確な情報を発信したり、誤情報に加担したりしたとして、企業の信頼性や誠実さが問われます。一度失った信頼を取り戻すことは容易ではありません。
- 炎上と風評被害: 誤りが指摘されたり、情報の悪意が明らかになったりした場合、ユーザーからの強い批判に晒され、大規模な炎上に発展する可能性があります。これが拡散することで、広範な風評被害につながります。
- 法的責任: 誤情報の内容によっては、名誉毀損やプライバシー侵害、風評被害による損害賠償請求など、法的な問題に発展する可能性もゼロではありません。特に、競合他社や個人に関する誤った情報は危険です。
- コミュニケーションの障害: 誤った情報発信は、顧客やステークホルダーとのコミュニケーションにおける信頼関係を損ない、今後の情報伝達にも支障をきたす可能性があります。
SNSは情報の伝達速度が速い反面、情報の真偽が十分に検証されないまま拡散しやすいプラットフォームです。この特性を理解し、慎重な情報発信が求められます。
誤情報・フェイクニュース対策のためのポスト前チェックリスト
投稿内容が誤情報やフェイクニュースでないことを確認するために、以下のチェック項目を設けることを推奨いたします。
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情報源の信頼性は確認できていますか?
- その情報はどこから得ましたか?一次情報ですか?
- 情報の発信元は信頼できる機関、メディア、専門家ですか?
- 匿名のアカウントや、出典が不明確な情報は使用していませんか?
- 伝聞や憶測に基づいて情報発信を行っていませんか?
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情報の裏付けは取れていますか?
- 複数の独立した信頼できる情報源で、同じ情報が確認できますか?
- 公式発表や公的機関のデータなど、客観的な根拠はありますか?
- 社内の関連部署(IR、広報、法務、担当事業部など)に事実確認を行いましたか?
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表現は正確ですか?断定的すぎませんか?
- 事実と、憶測や個人の意見・解釈を明確に区別して記述していますか?
- 「〜と言われています」「〜の可能性がある」など、不確かな情報を断定的な表現で伝えていませんか?
- 誇張や歪曲なく、客観的な事実のみを伝えていますか?
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データや数値の出典は明確ですか?
- 使用しているデータや統計は最新かつ正確なものですか?
- データや数値の出典元を明確に記載していますか?(必要に応じて)
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使用する画像や動画は検証済みですか?
- 画像や動画が加工・編集されたものではないことを確認しましたか?
- 古い画像・動画を、現在の状況を示すものとして使用していませんか?(時系列の誤り)
- 他から転載した画像・動画の場合、著作権や利用規約上の問題はありませんか?
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社内関係者による確認は実施しましたか?
- 特に重要度の高い情報や、社会的な関心が高いテーマについては、広報責任者や法務担当者など、複数の目でチェックを行いましたか?
- 担当製品・サービスに関する情報の場合、製品開発部門やカスタマーサポート部門など、最も詳しい部署に事実確認を行いましたか?
情報の信頼性を保つための組織体制
誤情報リスクを低減するためには、個々の担当者の注意だけでなく、組織としての体制構築も不可欠です。
- 信頼できる情報源リストの共有: 社内で参照すべき信頼性の高い情報源(公式統計サイト、主要メディア、専門機関など)のリストを作成し、担当者間で共有します。
- 情報検証プロセスの標準化: 投稿する情報の種類に応じた検証プロセスを明確に定義し、担当者が従えるようにします。例えば、製品情報、IR情報、社会課題に関する情報などで必要な確認レベルを定めます。
- 社内承認フローへの検証項目の追加: 承認フローにおいて、「情報源の確認」「裏付けの有無」「関連部署による事実確認」といった項目を必須とします。
- メディアリテラシー教育の実施: SNS担当者だけでなく、情報発信に関わる可能性のある従業員全体に対し、誤情報やフェイクニュースを見抜くためのメディアリテラシー教育を行います。
- 訂正・謝罪プロセスの準備: 万が一、誤った情報を発信してしまった場合に備え、迅速かつ誠実に訂正・謝罪を行うための手順を事前に定めておきます。誰が判断し、どのような内容で、どのプラットフォームで発信するかなどを準備しておくと、緊急時に冷静に対応できます。
まとめ
企業SNSにおける誤情報・フェイクニュース対策は、単に炎上を避けるだけでなく、企業が社会における信頼できる情報発信者としての役割を果たすために不可欠です。
今回ご紹介したポスト前チェックリストの項目を参考に、日々の運用で情報の正確性を徹底的に確認してください。また、組織として情報の収集、検証、承認のプロセスを強化し、担当者のメディアリテラシーを高めるための取り組みを進めることも重要です。
情報の速報性が求められるSNSにおいても、正確性は何よりも優先されるべきです。地道な確認作業と体制構築によって、誤情報のリスクを最小限に抑え、ブランドの信頼性向上に繋げてまいりましょう。