【ポスト前チェックリスト】企業SNS運用を外部委託する際のリスクと炎上防止チェックポイント
企業がSNS運用を外部の専門業者に委託することは、リソースの効率化や専門性の活用といった多くのメリットをもたらします。しかしながら、自社ではない第三者に運用を任せることには、独自の炎上リスクも伴います。情報伝達の齟齬、ブランドイメージとの乖離、緊急時の対応遅延など、潜在的なリスクを十分に理解し、適切な対策を講じることが不可欠です。
この記事では、企業SNS運用を外部委託する際に想定される主な炎上リスクとその要因を掘り下げ、リスクを未然に防ぎ、安全な運用体制を構築するための具体的なチェックポイントや対策について詳しく解説します。企業の広報・PR担当者が、外部委託のメリットを享受しつつ、ブランドイメージを守るための実践的な知識を提供することを目的としています。
外部委託における主な炎上リスク
企業SNS運用を外部委託する際に考慮すべき主なリスクは以下の通りです。
- ブランドトーン&マナーの逸脱: 外部委託先が企業のブランドメッセージやターゲットオーディエンスの特性を十分に理解できていない場合、投稿コンテンツのトーンや表現が企業のイメージと合わないことがあります。これが積み重なると、フォロワーからの不信感や違和感につながる可能性があります。
- 情報伝達ミスによる誤情報の投稿: 新しい情報やキャンペーン詳細などが外部委託先に正確に、かつタイムリーに共有されない場合、誤った情報や古い情報が発信されるリスクがあります。これは企業の信頼性を損ない、訂正・謝罪といった対応を迫られる事態を招きかねません。
- チェック体制の不備: 投稿内容に関する企業側の確認・承認プロセスが曖昧である場合、外部委託先が制作した不適切な表現、著作権侵害の可能性のある画像、個人情報を含む内容などがそのまま公開されてしまうリスクがあります。
- セキュリティ問題: 外部委託先のセキュリティ対策が不十分である場合、SNSアカウントの不正アクセスや乗っ取りといった事態が発生する可能性があります。アカウントが乗っ取られると、企業になりすまして不適切な情報が発信され、大規模な炎上につながる恐れがあります。
- 危機発生時の連携遅延: 企業が不祥事を起こしたり、外部環境の変化(社会情勢など)によって投稿内容の見直しが必要になったりした場合、外部委託先との連携がスムーズに行われないと、適切な情報発信やリスクコミュニケーションが遅れ、事態の悪化を招くことがあります。
- 契約・仕様の曖昧さ: 契約書やSLA(Service Level Agreement)において、投稿頻度、コンテンツの質、成果指標、緊急時の対応手順などが明確に定義されていない場合、期待するサービスレベルとの乖離や、問題発生時の責任の所在が不明確になるリスクがあります。
炎上リスクを最小限に抑えるためのチェックポイントと対策
これらのリスクを回避し、安全な外部委託運用を実現するためには、以下のチェックポイントと対策を講じることが重要です。
1. 委託先選定時
- 実績と専門性の確認: 企業の業界やサービス分野に関する運用実績があるか、SNSマーケティングやリスク管理に関する専門知識を有しているかを確認します。過去の炎上事例への対応経験などもヒアリングの対象とします。
- 企業文化・ブランド理解への姿勢: 企業のミッション、バリュー、ターゲット顧客、ブランドトーンなどを深く理解しようとする姿勢があるかを見極めます。単なる作業代行ではなく、パートナーとして共にブランドを構築していく意識があるかどうかが重要です。
- セキュリティ対策体制: 外部委託先の情報セキュリティ体制(アクセス管理、個人情報保護、従業員へのセキュリティ教育など)が企業の基準を満たしているかを確認します。
2. 契約締結時
- 責任範囲の明確化: 運用に関する責任範囲(投稿内容の最終責任、コメントへの対応範囲、リスク発生時の初動対応など)を明確に定義します。
- 承認プロセスの明文化: 投稿前の承認フロー(誰が、どのタイミングで、どのように承認するか)を詳細に規定し、文書化します。緊急時の承認プロセスについても取り決めます。
- 緊急時対応手順の取り決め: 炎上やセキュリティインシデント発生時の連絡体制、役割分担、初動対応手順を具体的に定めます。24時間365日の対応が必要かどうかも含めて協議します。
- 情報共有・報告体制: 定期的な運用レポートの内容、報告頻度、緊急情報の共有方法などを明確に定義します。
- 秘密保持・情報漏洩対策: 企業の機密情報や未公開情報に関する秘密保持契約を締結し、委託先における情報管理体制を確認します。
3. 運用開始後(平時)
- 定期的なコミュニケーション: 委託先と定期的なミーティングを実施し、運用状況の確認、最新情報の共有、懸念事項のすり合わせを行います。社内の最新動向(新製品情報、IR情報など)は積極的に共有します。
- 共有ルールの徹底: 投稿内容に関するガイドライン、使用してはいけない言葉やテーマ、投稿タイミングのルールなどを文書化し、委託先担当者全員が理解・遵守しているかを確認します。
- 投稿前チェックの徹底: 定めた承認フローに基づき、投稿内容の事実確認、表現の適切性、著作権や個人情報などのリスク有無を企業側で必ずチェックします。このプロセスを省略しないことが極めて重要です。
4. 危機管理体制への組み込み
- 役割分担の明確化: 危機発生時における企業側の担当部署(広報、法務など)と外部委託先の役割分担を事前に明確にします。誰が対外的なコメントを作成・承認し、誰がSNS上でのコミュニケーションを担うのかを定めます。
- 情報共有の迅速化: 危機発生時は、企業内の情報が委託先に迅速かつ正確に共有される仕組みを構築します。誤った情報や判断の遅れが、SNS上での二次被害につながる可能性があります。
まとめ
企業SNS運用における外部委託は、そのメリットを最大限に引き出す一方で、潜在的なリスク管理が成功の鍵となります。委託先の選定から契約内容、日々のコミュニケーション、そして危機発生時の連携に至るまで、多岐にわたるチェックポイントが存在します。
安全な運用体制を構築するためには、外部委託先に任せきりにするのではなく、企業側が主体的に関与し、明確なコミュニケーションと厳格なチェック体制を維持することが不可欠です。本記事でご紹介したチェックポイントが、貴社のSNS運用における炎上リスクを低減し、より強固なブランドコミュニケーションの実現に繋がることを願っております。