【ポスト前チェックリスト】SNSプラットフォーム別の炎上リスク特性と対策
企業SNS運用を担当される広報・PR担当者の皆様へ。
SNSにおける情報発信は、ブランド認知向上や顧客エンゲージメント強化に不可欠な手段ですが、同時に炎上リスクも常に伴います。このリスクは、運用するSNSプラットフォームの種類によってその性質が大きく異なることをご存知でしょうか。各プラットフォームの特性やユーザー層の違いが、投稿に対する反応や情報の拡散の仕方、そして炎上の原因となる要因に影響を与えます。
本記事では、主要なSNSプラットフォームごとの炎上リスク特性を解説し、それぞれのプラットフォームに合わせた具体的な対策チェック項目をご紹介します。これにより、プラットフォームの特性を理解した上で、より安全な投稿体制を構築するための一助となることを目指します。
SNSプラットフォームごとの炎上リスク特性
各SNSプラットフォームには、固有のリスク特性が存在します。主要なプラットフォームについて、その特性と典型的な炎上リスクを見ていきましょう。
X (旧Twitter)
- 特性: リアルタイム性、高い拡散力、短いテキスト主体、匿名性の高いユーザー層、多様な意見が混在。
- 典型的な炎上リスク:
- 不適切な言葉遣いや差別的な表現が瞬時に拡散される。
- 誤情報やデマが広がりやすい。
- 個人的な意見や不満が企業の公式見解と誤解される。
- 過去の投稿(デジタルタトゥー)が掘り起こされ炎上する。
- トレンドワードに乗るつもりが、文脈を誤解され批判される。
- 政治的・社会的なデリケートな話題への不用意な言及。
- 特性: 画像・動画中心、ビジュアル訴求が重要、ハッシュタグによる探索、コミュニティ形成、比較的若年層が多い。
- 典型的な炎上リスク:
- 著作権・肖像権を侵害する画像や動画の利用。
- 不適切な風景、人物、小道具が写り込んでいる。
- 製品やサービスの表現が誇張されすぎている(景表法違反リスク)。
- ステマ規制に関する表示の見落とし。
- ハッシュタグの選択ミスや不適切な使用。
- コメント欄での不適切なやり取りや放置。
- ブランドイメージと乖離した過度な加工や演出。
- 特性: 実名利用が基本(比較的)、友人・知人との繋がり、長文投稿やリンク共有、多様な年齢層、コミュニティ機能。
- 典型的な炎上リスク:
- 個人的な情報やプライベートな内容の混入。
- 企業情報に関する誤った内容や古い情報の発信。
- グループ機能やイベント機能での管理不備。
- ユーザーコメントやメッセージへの対応遅延・不備。
- 広告運用におけるターゲティングやクリエイティブの不適切さ。
- 情報の正確性や出典の不明確さ。
TikTok
- 特性: 短尺動画中心、トレンドやチャレンジ、若年層が中心、音楽・エフェクト活用、レコメンド機能による拡散。
- 典型的な炎上リスク:
- トレンドやチャレンジへの参加が企業のイメージと合わない、あるいは不適切と判断される。
- 動画の内容が不謹慎、または他者を不快にさせる可能性がある。
- 音楽の著作権侵害。
- 出演者の不適切な言動や経歴。
- 編集ミスによる誤解を招く表現。
- 急速な拡散によるコントロールの困難さ。
プラットフォーム別の炎上リスク対策チェック項目
上記の特性を踏まえ、プラットフォームごとに重点的に確認すべきチェック項目を以下に示します。これは一般的な項目であり、自社の業界や運用体制に合わせて適宜追加・修正が必要です。
全プラットフォーム共通のチェック項目
- 投稿内容が企業理念やブランドイメージ、そしてSNS運用ポリシーに沿っているか。
- 個人情報、機密情報が含まれていないか。
- 著作権、肖像権、商標権などの権利を侵害していないか。
- 虚偽・誇張表現、景品表示法、ステマ規制に抵触しないか。
- 差別的、性的、暴力的、または特定の個人・団体を誹謗中傷する表現がないか。
- 不謹慎、非常識と受け取られる可能性のある表現がないか。
- 表現が特定の政治、宗教、社会問題について偏った見解を示唆していないか。
- 公序良俗に反する内容でないか。
- 使用している画像や動画に出典や許諾が必要なものが含まれていないか、またそれが明記されているか。
- 誤字脱字がないか。
- 第三者(複数名)によるダブルチェック・承認フローを経ているか。
X (旧Twitter) 特化チェック項目
- 短いテキストでも誤解なく意図が伝わるか。
- 特定のハッシュタグを使用する場合、その文脈や過去の使用状況を確認したか。
- リアルタイムな時事ネタに言及する場合、最新かつ正確な情報に基づいているか、また不用意な発言になっていないか。
- 過去の炎上事例やトレンドを参考に、同様のリスクがないか検討したか。
- リプライやDMへの対応方針が定められており、その内容に沿って適切に対応できるか。
Instagram 特化チェック項目
- 画像・動画に不要なものが写り込んでいないか、また意図しない情報が含まれていないか。
- 製品やサービスに関する表現が客観的な事実に基づいているか、誇張しすぎていないか。
- タイアップ投稿や広告の場合、ステマ規制に対応した明確な表示(#PR, #広告など)を行っているか。
- 使用している音楽やBGMに著作権上の問題がないか。
- コメント欄の管理体制(フィルタリング、監視、返信方針)は構築されているか。
- ストーリー投稿の場合、公開範囲や期間設定は適切か。
Facebook 特化チェック項目
- 投稿内容が、ページをフォローしている既存ファン層の期待やコミュニティの雰囲気に合っているか。
- イベントやグループ機能を利用する場合、管理体制は明確か。
- 個人アカウントと公式アカウントの切り替えミスが発生しないような対策(ログイン管理など)は行っているか。
- シェアされた場合の情報の正確性や誤解の可能性を考慮したか。
TikTok 特化チェック項目
- 利用する音源が商用利用可能なものか確認したか。
- トレンドやチャレンジに参加する場合、その元ネタや背景に問題がないか十分に調査したか。
- 出演者のキャスティングは適切か、また出演者の過去の言動にリスクがないか確認したか。
- 動画の編集やテロップで誤解を生む表現になっていないか。
- 短い時間で伝えきれない補足情報がある場合、キャプションなどで補足しているか。
複数のプラットフォームで運用する場合
複数のプラットフォームで企業アカウントを運用している場合、各プラットフォームの特性に合わせた内容や表現の調整が必要です。同じ内容をそのまま横展開するのではなく、それぞれのプラットフォームのユーザー層や文化、そしてリスク特性に合わせて最適化することが重要です。また、一つのプラットフォームでの炎上が他のプラットフォームにも波及する可能性があることを常に意識し、全体的なリスク管理体制を構築することが求められます。
まとめ
SNSプラットフォームごとに異なる炎上リスクの特性を理解し、それぞれの特性に合わせた具体的な対策を講じることは、企業がSNSを安全かつ効果的に運用するために不可欠です。今回ご紹介したチェック項目を参考に、皆様の企業における「ポスト前チェックリスト」を見直し、強化することで、不測の事態を回避し、企業ブランドを守る運用体制を構築していただければ幸いです。
SNSにおけるリスク管理は継続的な取り組みが必要です。常に最新のプラットフォーム動向や過去の炎上事例から学び、チェックリストをアップデートしていくことが、安全なSNS運用への鍵となります。